2010年11月26日
暮らしの中のアート レストラン/一味真 四ツ池
五感をフルに使って感じる料理は特別なアート
一味真 四ツ池/上唐湊至さん
—料理では味はもちろん、視覚的な部分も大切だと思うのですが、料理のどんなところにアート性を感じますか。
まず盛り付けです。あとは皿を選ぶセンスや食材の色の組み合わせ。それをバランスよく皿に盛り込むことですね。
—やはり料理はすごくアート性を持っているものだと思われる?
私のエゴかもしれませんが圧倒的に思います。絵画や彫刻品など見て触れるものもありますが、体の中に取り込めるものは料理だけ。体をフルに使って五感で楽しめるアートだと思います。そして「キレイ」という言葉だけでなく「おいしい」という言葉もついてくる。これはほかの芸術にはありません。キレイでおいしくて喜びがつまっている。そのように五感をフルに使って感じるアートが料理だと、ここ何年かで思うようになりました。
ーそう思うようになったきっかけはあるのでしょうか?
私自身も幼少の頃、絵や書をやっていたことがありまして。書にまつわるものでもバランス感覚や一枚の紙の空間におさめて書かなければいけない。書はまず手本を見て、まるで下から写したように書く。それを自分の中で立体的にイメージしてバランスよく書くなど、その感覚はこの頃に養われましたね。
一味真 四ツ池/上唐湊至さん
—料理では味はもちろん、視覚的な部分も大切だと思うのですが、料理のどんなところにアート性を感じますか。
まず盛り付けです。あとは皿を選ぶセンスや食材の色の組み合わせ。それをバランスよく皿に盛り込むことですね。
—やはり料理はすごくアート性を持っているものだと思われる?
私のエゴかもしれませんが圧倒的に思います。絵画や彫刻品など見て触れるものもありますが、体の中に取り込めるものは料理だけ。体をフルに使って五感で楽しめるアートだと思います。そして「キレイ」という言葉だけでなく「おいしい」という言葉もついてくる。これはほかの芸術にはありません。キレイでおいしくて喜びがつまっている。そのように五感をフルに使って感じるアートが料理だと、ここ何年かで思うようになりました。
ーそう思うようになったきっかけはあるのでしょうか?
私自身も幼少の頃、絵や書をやっていたことがありまして。書にまつわるものでもバランス感覚や一枚の紙の空間におさめて書かなければいけない。書はまず手本を見て、まるで下から写したように書く。それを自分の中で立体的にイメージしてバランスよく書くなど、その感覚はこの頃に養われましたね。
—そういうものに触れたり、いいものを見たりすることが五感を磨くということにつながるんですね。
簡単なところでいえば夕日を見て「きれいだな」とか海を見て「きれいだな、広いな、大きな」など素直に感じられること。たとえばウインドウショッピングで「この服かわいいな」「着てみたいな」「娘に着させたらどうなるかな」というのをプラスαで何かに想像して置き換えてみる。そこで自分の中で形にできます。見ただけではまだ二次元の世界なので、頭でイメージして想像するんです。料理も食べる人の気持ちになって作ることが大切。自分で食べたいと思うくらいでないとお客様には出せません。中途半端なものを出せばのちのち跳ね返ってきます。だから少しのことでも注意をしたり、仕事の意識を高く持ったりしないといけません。食べ物は人の口に入るものであり、気持ちが伝わるものだと思います。私もこれまで何人かのお客様に「上唐湊さんの気持ちが伝わってくる」と言われたことがあります。味どうこういうよりも上唐湊さんらしい味だと。性格が料理を通じてわかるんですね。だから料理は自分を表現するものだと思います。絵や書道でも心が乱れると筆が乱れると言いますが、その通りで体調がよくないとうまく書けない。集中力が続きません。
—それは料理に置き換えても言えることでしょうか。
しょっぱい、甘いなどそういうのは若干あります。たとえば夏で汗をかいたら体が生理的に塩分を欲しがります。だからひょっとしたら少し塩分が濃くなっているかもしれない。それも含めたうえでさじ加減をします。その先にはお客様が待っていて「おいしい」と言ってくれないと何も始まらないですから。先を絶対に考えなくてはいけないですね。
—上唐湊シェフの料理のこだわりとは?
バランスです。料理だけではお客様に気持ちは伝わりません。たとえばタイミングよくお皿を出すサービスの気配りやBGMなど。ほかにも照明の明るさ、皿のサイズや柄、お客様は若い方なのかお年を召した方なのか、接待なのか家族なのか。全部含めてバランスを見ないと料理は成り立ちません。相手があってこそ。だから、たまに自分のレストランで食事をします。盛り付けをしている場所での見え方と、すべてがセットされている中で運ばれてくるものとは感じ方がまた違うのでそれを体験してみます。何かが突出していてもだめで、やはりバランスが大切だと思います。体もバランスが崩れると体調を崩してしまうように、料理でもそれが伝わってしまいます。
旬の食材を使い、配置や彩りなどすべてに気配りされたアートのような一皿。
「極寒の海原よりまだらの香草パン・その白子を添えて」
—色々なものが凝縮している料理は究極のアートなのかなと思いますね。
それくらいのことを仕事にしていると、自分に言い聞かせています。今でこそ料理人を取り上げた番組や雑誌がありますが、15~20年前まではそれほどフューチャーされていませんでした。ヨーロッパ、とくにフランスでは料理人はステイタスが高い。お客様の前に出ることもありますから身なりもしっかりしないとダメですね。スーツを着ることと同じです。私もコック服をきたら仕事モードにチェンジします。
—装いも大切ですね。
見られる仕事になってきて、自分もしっかりしておかないとそれが必ず料理にも出ます。最近では料理以外の別のジャンルを勉強することも必要だと思っています。例えば料理説明でモゴモゴ話していたらおいしさが半減してしまうかもしれません。いかにもおいしそうに説明し、「おなかすいた」と思わせるような話術がないと次の予約につながりません。そのために料理人同士で話をするときも、違うジャンルの方と話して知識を得たり、ニュースや情報番組の司会者がどのように伝えているのかも集中して見たりします。自分が語り手になったときにお客様との会話でどのように話せば伝わるのか、すべて勉強です。
—家庭で料理でアートを気軽に楽しむにはどうしたらいいですか。
機材や皿にもよりますが、もし大皿に盛るのであれば、飾り付けでハーブを飾るとか。味はほとんど変わりません。でも少し添えるだけで見た目が楽しくなります。皿の大きさに少し気を使ってみるのも良いでしょう。ただ盛るだけではなく、何かを考えて行うことで変わってきます。最初は雑誌をみて真似をするのもいいと思います。食事だけでなくその横にポンと花を置いても素敵です。料理だけで表現するのは難しい。だから何かプラスするんです。
—料理の過程で変化を楽しむこともそうなのかなと思うのですが。
火をあやつりながら、いわゆる作品ができる過程を楽しむこともそうです。焼き始める前と焼き終わった後だけではなく、その途中を楽しむ。こんな風に食材って変化するんだというように、少し見方を変えてみるといいですね。ただ、家庭によって時間の流れも違うので、「忙しいところにそんなことやってられるか」なんて思うかもしれません(笑)。それはそれでいいと思います。料理教室もやっていますが、終った後に「このまま作れないかもしれないし、作れるかもしれない。あとは奥様方のキッチンでアレンジしてください」と言います。各ご家庭でしっかりやってくださればいいんです。使える皿の中でアート感や自分のセンスを楽しんでいただきたいですね。
一味真 四ツ池
浜松市中区幸3-5-8(ミュゼ四ツ池内)
053-474-1818
営業時間/ランチ11:30〜14:00、ディナー18:00〜20:30
定休日/火曜日
>>www.ichimishin.com
Posted by gysDESIGN スタッフ at 19:00│Comments(0)
│vol.21 暮らしの中のアート